中国の「シェア自転車」が便利すぎてヤバい!


中国では近年、毎年のようにスマホアプリを活用した超便利な社会システムが生まれている。政府の後押しがその社会システムを加速させている。その一つとして、大注目なのが、都市部を中心に昨年から大流行の「シェア自転車」だ。現在、「シェア自転車」には数社が乱立した状態で、洗練されたデザインで特に注目なのがMOBIKE(摩拝単車)だ。既に、上海、北京、天津、广州、深圳、成都、寧波、厦門、福州、武漢、昆明、南京、東莞、済南、佛山、珠海、長沙、合肥、汕頭、海口、西安、南寧、南昌、德陽などで利用が可能となっている。

 料金は30分0.5~1元(1元は約16円)。事前の登録時に299元のデポジットを支払う(退会時全額返却)。登録には携帯電話番号と身分証(外国人はパスポート)、支付宝(ALIPAY)などのスマホ決済システムが必要になるが、手続は全てスマホで簡単に済ませることができる。

 

新感覚な画期的サービス

日本でも観光地を中心に各都市でレンタルサイクルは普及している。その中でも、私が印象的だったのは、高松市のレンタルサイクルサービスだ。中古の自転車を活用した高松市のレンタルサイクルは、観光客のみならず高松市民にも有効活用されている。高松市では自転車専用道も設けられており、市内に7箇所のレンタルサイクルポートがある(高松市のレンタルサイクル)。今回の中国の「シェア自転車」が、これまでのレンタルサイクルと異なるのは、スマホとの連動、電子決済、好きな場所で好きなタイミングに手放せるという3点にある。

 

①スマホとGPSの利便性を活かした未来的サービス

自転車のハンドル部分、サドルの後ろ部分にはバーコードが付いている。レンタル申請はこのバーコードにスマホをかざすことで完了する。さらに、GPSで管理されており、スマホ画面に表示された地図上で周辺の空き自転車を探すことができ、予約することもできる。もちろん、自転車にもGPSが搭載され、走行距離や走行時間、決済金額なども確認ができる。GPSの特徴をフルに活かした画期的なサービスと言える。

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②スムーズ過ぎる”電子決済”

中国では、近年あたりまえのように活用されているのが、スマホアプリによる決済システムだ。今回の新感覚のレンタルサイクルサービスもWechat決済や支付宝(ALIPAY)との連動で、「スムーズな決済」という難題も容易に解決してしまった。これら決済システムは、一定額を貯金しておきその中から利用額を清算していく方法だが、決済システムとシェア自転車アプリで身分認証が二重に行われており、さらにあらかじめデポジット299元(約5,000円)を預けるため、破損や盗難などにもきっちりと保険が掛けられている。この決済システムは何よりもストレスなくシェア自転車を利用できる理由の一つとなっている。決済システムについては、「支付宝(アリペイ)」が便利すぎて凄すぎる!も参考にしていただきたい。

 

③好きな場所で好きなタイミングに手放せる新感覚

これまでのレンタルサイクルは、レンタルポートで借りてレンタルポートに返却するというのが常であったが、今回の「シェア自転車」はその常識をも一気に覆してしまった。目の前に自転車があれば、どこで借りてもどこで手放しても完全にフリーなのだ。返却場所に全く規制もなく、とある建物の前であろうが道端であろうが、車や歩行者の邪魔にならない常識の範囲内であればどこでもいい。従い、利用者の行動範囲をも変えてしまった。公共交通機関との併用で更に便利さが増す。そのせいか、バス停付近では多くの「シェア自転車」を見かける事ができる。

 

「シェア自転車」を活用した行動パターンとしてはこのようなイメージ。

得意先のA社工場へ営業へいく。これまでは、A社には「徒歩+地下鉄+バス+徒歩」とによる移動手段でドアトゥドアで60分かかっていたが、わずか35分で目的地に到着する事ができた。まずは地下鉄の駅まで徒歩10分のところを、オフィスビルの前にとめてあった「シェア自転車」でわずか5分で到着。そこから地下鉄で移動。地下鉄の駅で新しい相棒「シェア自転車」に乗る。通常はバスと徒歩で4キロほどの距離、待ち時間含めおおよそ35分のところを「シェア自転車」で15分で到着。もちろんA社の目の前まで自転車で行く事ができた。かかった交通費はわずか5元(約80円)。

→ これまでの行き方

徒歩(10分)+地下鉄(15分)+バス+徒歩(35分)合計60分(乗り換え、待ち時間含む)

→ シェア自転車を利用

自転車(5分)+地下鉄(15分)+自転車(15分)合計35分(乗り換え含む、待ち時間は地下鉄のみ)

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さらに、街中の自転車での移動により、新たな嬉しい発見もあった。「こんなところに公園があったのか!?」「オシャレなカフェを発見!」などなど。車やバスでは感じられない感覚を味合う事もできる。

60分1元(16円)のお手頃な料金設定も魅力的だ。上海ではバスの運賃が2元(32円)、タクシー初乗りが14元(224円)。近郊での移動手段でいうと、「シェア自転車」は時間的にもコスト的にも最も効果的な移動手段となっている。目的地に着いたら目の前の路上に停めるだけなので、とにかく効率がいい。

自転車のデザインは先進的で、とてもオシャレ。街のあらゆるところで自転車は待機しており、好きな場所で好きな時間に乗れて、好きな場所で手放せる。手放した自転車は、別の利用者がまた乗っていく。

 

なぜ日本では普及しないのか。

「自転車大国」として知られる中国だが、確かに多くの都市部では自転車やバイク(原付、電動式自転車など)が人々の通学、通勤の足として浸透している。テレビなどで大量の自転車集団が道路を横断する映像を見た事がある人も多い事だろう。しかし実は、自転車をあまり見かけない都市もある。例えば、青島、重慶、四川省の多くの都市では自転車をあまり見かけない。特に重慶では自転車はほぼ皆無。なぜなら、街が山の上にあり急激な坂道を自転車で上り下りするのは非効率だからだ。従い「中国=自転車王国」と一概にも言えないのも事実だ。

 

中国では当たり前の自転車盗難

それはさておき、上海や北京など平地に覆われた都市部では、今後もこの「シェア自転車」がますます有効活用されることだろう。中国で急激にこのサービスが広がった要因としては、中国ならではの悩みもあった。それは自転車盗難の多さである。中国人なら一度は必ず経験したことがある自転車盗難被害。自転車を所有している人は、盗まれることが前提にわざと錆びたフレームのボロボロの自転車を所有している。自転車置き場には停めずに、マンションのエレベーターに乗せて自室まで持っていく人も少なくない。それであれば、「自転車を公共物にしてしまえー!」という発想もこのサービスを後押ししている。中国でも最近人気が高まっている高級ロードバイクなどを除けば、確かにこの「シェア自転車」の出現で自転車盗難は減少していくことだろう。

 

個人のプライバシー保護という課題

これまでになかった「シェア自転車」の便利さは、実名制の個人認証管理、GPSによる現在位置の把握との連動に支えられている。街中に放置された自転車を個人が自由に使う仕組みであるため、そこには個人の行動を確実に管理できる仕組みが必要となる。事前の登録時に身分証(外国人ならパスポート)番号と実名登録、顔写真の登録、銀行の実名口座と結びついたアリペイなど決済口座との連動によりで利用する個人が特定されている。さらに、GPSにより移動の経路や時間は全て記録に残る。

利用者にはポイントが付与され、ルール通りに利用すればプラスポイントが加算されるが、ルール違反などによってはペナルティとしてポイントが差し引かれ、一定以上の累積で利用停止となる。さらに、この信用ポイントは政府管理の個人情報管理システムとも連動される予定であることから、その個人の評価としてカルテのように一生残っていくこととなる。銀行からの融資や就職など社会的信用資料として参考にされる可能性もある。利用者は、この状況を前提としてサービスを利用している。

 

不可欠な政府のバックアップ

そして、この大胆な発想の実現を後押しするのが、政府の支援と民間の闇雲とも言えるほどの活発な投資である。中国の地方政府は、稼働率の低い自転車の大量滞蔵、そしてマイカーやタクシーの近距離利用による交通渋滞、大気汚染の悪化などの対策として、このシェア自転車に注目、積極的に支援している。前述した自転車専用レーンや自転車置き場の増設、都市計画への積極的な組み込みなど、政策は極めて現実的だ。

そして、そこに続くのが民間の投資である。中国では政府の政策的後押しは、民間の投資の大きな誘因になる。すでにシェア自転車のベンチャー企業各社には日本円で数百億円規模の投資資金が続々と入っている。前述したMOBIKEのGPS付き自転車の製造コストは1台あたり1000元程度とみられており、30分間で0.5~1元という利用料金では簡単に儲かるビジネスでないことは明らかだ。しかし、それでも多額の資金が集まる背景には、即断即決、ハイリスク・ハイリターンの投資を好む中国社会の投資観がある。業界トップを走るMOBIKEはすでに全国100都市に計1000万台の自転車を配置する計画を発表している。黒字化はまったく見えないが、当面、その勢いは止まりそうにない。

中国の都市部でスマホアプリと決済システム、GPSを結合した「どこでも乗れて、路上で乗り捨て自由」なハイテク共有自転車が爆発的に広がっている。順調に成長すれば、個人所有の自転車は事実上、消滅するとの見方もあるほどだ。世界初のユニークなシステムが中国で誕生し、普及したのはなぜか。その根底を考えてみたい。

(当段落「不可欠な政府のバックアップ」は「中国を席巻するハイテク「シェア自転車」~仕組みで意識を変える試み」より抜粋)

 

とにかく、便利で新感覚な中国の「シェア自転車」サービス。シンガポールなど複数の国がこのサービスの採用を検討している。今後の課題は、自転車の老朽化や故障などに対してどのように対応していくのかだろう。毎年のように、次々に便利な新しいサービスが誕生している中国社会。今後も注目していきたい。

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