海外の日本語学習者数は減少へ


国際交流基金により2016年末に公表された最新動向を元に、各国における日本語学習者数の増減と日本留学への可能性について考察してみました。国際交流基金は、海外における日本語教育機関の状況を把握するために、3年に1 度「海外日本語教育機関調査」を実施。2015年度の調査では、前回(2012年度調査)より1か国多い137の国・地域において日本語教育が実施されていることが確認されました。

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日本語学習者数では、近年順調に増加していたが、2015年の調査では減少に転じている。

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国別では、上位3国の中国、インドネシア、韓国さらに台湾で減少。一方、オーストラリア、タイ、ベトナム、フィリピンでは大幅に増加。スクリーンショット 2017-02-13 14.35.33

 

日本語教育機関数では、韓国、ニュージーランドで減少。それ以外は増加している。

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日本語教師数は、タイ、ベトナムなど特に東南アジアでは増加。中国、台湾では学習者が減少しているものの教師数は増加している。これら二国では、一時の日本語学習ブーム時の学習者が教師志望となっているものと想像される。

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中等教育、高等教育での学習者の減少が目立つ。

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日本語学習者数の減少要因

① 中等教育における第二外国語での学習者が大幅に減少。

 →インドネシア、韓国では第二外国語の選択義務がなくなった。

② 「就職」を意識した日本語離れ

  →中国においては、日本企業の現地離れ、日本語ニーズの低下。

③ 少子化

 →東アジア(中国、韓国、台湾)では少子化も学習者減少の要因として考えられている。

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各国別傾向

中国「近年の日本語離れは顕著、コアなターゲットは健在」

2012年の大規模な反日運動、さらに中国経済の成長鈍化に伴い、日系企業が中国への進出を控え、ASEAN諸国へ拠点を移す動きもあり、日本語学習そのものに対するニーズ低下は否定できない。国内大学でも日本語専科の定員数を削減するなどの動きも見られる。中等教育においては外国語科目として英語を選択する機関が増加しており、この影響は高等教育にも及んでおり、今回の調査においても、英語科目の重視が日本語科目の運営に影響を及ぼしていると回答する機関が多かった。しかし、国内の就職難などから、学習者の減少と反して日本留学希望者は近年回復傾向。

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インドネシア「中等教育第二外国語の学習者が大幅に減少、全体的傾向は楽観視」

世界第二位の日本語学習者数を誇るインドネシアだが、2015年は減少に転じた。高等教育では、日本の文化への関心などから日本語を履修する学生が増加し、前回比25%以上の学習者増があったが、中等教育機関においては、2013 年の政府による教育課程の改定によって、それまで必修科目であった第二外国語を中止し、受験に有利な科目に切り替える機関もあった。その結果、インドネシアにおける日本語学習者の大半を占める中等教育において学習者数が15.8%減少したことから、全体としては学習者数が減少した(約 12.7万人減)。

日本への留学や日系企業への就職という観点では、比較的意識の高い学習者が増加している。日本語能力試験受験者数でもその傾向が見られる。インドネシアは数字的には減少に転じたが、着実に日本語学習者層は広がっている。

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韓国「近年の環境変化には注意が必要」

2011年の中等教育の教育課程改定において第二外国語が必修科目から外されたことで、韓国全体の日本語学習者のうち約 8 割を占める中等教育における学習者が大きく減少したことと、少子化により学生数全体が減少したことを背景に、2012年度調査に引き続き減少した(約 28.4 万人減)。

また、近年の日韓関係の悪化、2011年の東日本大震災なども日本語学習者の減少に影響していると考えられる。その一方で、国内財閥への就職を目標とした高学歴志向も崩れつつもあり、日本の高校や大学への進学希望者は増加傾向にある。また、大学統一試験において、高得点が狙える日本語を選択する動きも見られる。訪日観光客は2015年400万人を突破し、過去5年で2.4倍に増加、特に若者の訪日客が増えている。全体的な学習者数減少は否めないが、これら追い風要素を活かして戦略的に学生募集を行いたい。

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その他各国の現状

オーストラリア、タイ、ベトナム、フィリピンにおいては日本語学習者数の大幅な増加が見られる。教育段階別に見ると、前回の調査と比較して、高等教育や中等教育においては、機関数、学習者数は減少あるいは横ばいという状況が見られたのに対し、初等教育においては、機関数、教師数、学習者数がいずれも大きく増加した。これはオーストラリアや英国を始め計55か国・地域で、初等教育において日本語教育導入が進んだことが影響している。

  • タイにおいては、日本文化への関心などから日本語学習者数は増加しているが、大学の第二外国語では日本語よりも中国語が近年は人気傾向。これらの動向には注意が必要。

  • 台湾全体での日本語学習者数は減少との統計結果が出ているが、日本語能力試験受験者数は増加。熱心な日本語学習者は依然健在。

  • ベトナムでは近年、民間の日本語学校が多く新設されており、中等教育でも日本語を採用する機関が増えている。優秀な高校からはN2相当の学生も輩出している。ただ、学習者の多くは仕事探しが目的とみられ、日本への留学申請者の多くも就労目的が多い。その一方で、大学を卒業後、日本語を学習し日本留学を目指す層も増えている。

 



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