中国には、なぜカラスがいないのか。

カラス 中国

私は、中国で10年間も生活をしてきましたが、街中で一度もカラスを見た事がありません。周囲の日本人や中国人に聞いても中国では見た事がないと言います。逆に、日本を訪れると「なぜ、日本はこんなにカラスが多いのか!」と中国人は驚きの声をあげます。

今回はこの「謎」について考察します。

 

中国ではもともと、カラスは神聖化された存在だった。

現代の中国人の多くは、我々日本人同様にカラスを不吉な存在、好きではないという印象を持っているようです。しかし古来中国では、カラスは神聖化された存在であり「太陽=カラス」という性質があったともされています。研究者の文献のなかにもそのような表現を見つける事ができます。

 カラスを太陽の使いと位置づけるもので、前述のアイヌ民話しかり、ギリシア神話またしかりである が、他にも、キリスト教圏、北米(ネイティブインディアン)、中国等、世界各地に同様の神話・伝説が残っている。生活文化の異なる地で、これだけカラスのイメージが重なるのは驚くべきことである。
参考:カラス今昔物語

太陽の中には三本足のカラスが居ます。
10個の太陽が堯(ギョウ)の時代に一度に現れました。
そのために地は灼熱の地獄となりました。
参考:中国の太陽神話

 

ペットとしてカラスを飼う中国人。

かつて中国では、「鳥」がペットとして人気がありました。特に、定年退職したような年代の男性が、毎朝家から鳥かごを持ち出し、近くの公園へ出かけるのをよく見かけたものです。公園では、鳥かごを木の枝にぶら下げて、仲間と鳥話で盛り上がります。そんな光景が以前の中国ではよく見られていました。しかし、最近では若者を中心に「犬」がペットとしては人気です。

 

カラスは動物市場で売っている。

私が唯一、中国でカラスを見かけたのは動物市場でした。動物市場とは、まさに動物屋が集結した市場です。あらゆる動物を販売している商店が軒を並べます。その一角に、カラスを売っているお店を見つけたのです。

実際に、カラスを愛好する人たちのコミュニティがあります。9663人(2017年3月現在)が登録しています。動画や写真を投稿し、ご自慢のカラスについて交流しています。

乌鸦爱好者的交流平台,欢迎各位在此交流!
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日本でもペットとして飼う人がいました。

漫画家の犬養ヒロさん。元々動物看護士として動物病院に勤務したことがあるくらい、根っからの動物好き。ある日、猫に羽をかまれて飛べないでいたハシボソカラスのヒナを見つけたそうだ。そこでかわいそうに思った犬養さんは、愛情深い親ガラスに襲われつつもなんとか保護。傷が治ったら自然にかえすつもりが、動物病院で一生飛べないと診断されたために、自宅で飼うことに。コミックエッセイ『カラス飼っちゃいました』(ぶんか社)で、かいがいしく世話をするカラスライフを披露する。

16年間、カラスをペットとして飼い続けて分かったこと【けっこうカワイイ?】

 

中国からカラスが消えた理由は?

では本題の、中国でカラスが消えた理由について見ていきます。
このような研究をされている方はおられないと思いますので、諸説から考察してみます。

①毛沢東主導の大躍進政策

1958年から1960年にかけて中国では大躍進政策が推し進められました。その際に、農作物を食い荒らすスズメを駆除しています。その結果、スズメを駆除したことによって害虫が大発生し、農業生産が大きな打撃を受けたといいます。この時に、カラスも駆除されたという記録は残っていませんが、生態系に異常が現れ、カラスが消えていったという説。

②食べてしまった

中国では漢方薬にカラスを用いた「烏犀圓」というものがあります。「烏犀圓」は古く、中国、宋代の薬方書「恵民和剤局方」にその記載が見られ、いわゆる不老長寿、若返りの妙薬として調合されたものです。カラスを寒中に捕獲し爪、くちばしを去り、黒焼きにして用いるそうです。日本では佐賀県で寛政8年(1796)頃に伝わり、製造販売されているそうです(参考:江戸時代の薬(癲癇)、薬酒の楽しみかた)。

③ゴミは素早く片付られる

中国では「分業制」が確立されており、ゴミはすぐに清掃員によって片付けられます。路上のゴミ、マンションや住宅地の生ゴミもそうです。従い、悪臭を伴うゴミが数時間放置されることはあまり多くない事も理由の一つかもしれません。その反面、上海や広州など大都会でも少し路地に入り、外れに行くと、産業廃棄物などが放置されている様子も見受けられます。しかしこのような所でもカラスを見る事はありません。

④環境汚染問題

近年の急激な経済成長に伴う環境汚染は、人間だけではなく動物や植物の生態系にも悪影響を与えている事は間違えないでしょう。カラスに限らず、中国では野生の動物が圧倒的に少ないと感じます。大躍進政策で駆除されたスズメも、日本でよく見かける鳩も、中国では見かける事は稀なのです。

 

以上が、中国でカラスを見る事ができない要因として考えられます。いかがでしょうか。本当の理由はカラスに聞いてみないとわからないのですが、複合的な要因によりカラスがいなくなったと思われます。それにひきかえ、日本はカラス王国と言っても良いほど。日本で見かけるカラスの多さに驚く外国人は少なくないようです。

 

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