〜海外で働く〜煽りには乗らない。まず自分を知ることが大切。


―日本人はなぜ組織にしがみ付くのか

「最近、息苦しくなったよ。社内のコンプライアンスも厳しくなって」

「毎年、同じ仕事の繰り返し。10年同じ商品を売ってる」

「後ろ向きな仕事が多いね。コストをいかにカットするか、会社の指示はそれだけ」

日本で友人に会うとそんな声が聞こえて来ます。皆さんは同僚と飲みに行ってはそんな話ばかりしていませんか?多くの方がどうすれば良いのかというアイディアは持っておられます。しかし行動に移せない。

「まずはご自分が動いてみたらどうですか?」 と私が言うと

「うちは組織がでかいから無理だよ。一人ではどうにもならない」 と返ってくる。

どうにもならないかもしれないがとりあえずやってみる。これが大切なのではないかと私は考えています。無駄の繰り返し。協力者が現れないばかりか周囲には馬鹿にされるかもしれない。しかしそれでもやってみる。すると少しずつですが、何かが見えてきて今抱いている閉塞感からは抜け出せます。

アジアで起業する人は、ある意味ぶっ飛んでるのかもしれません。

私自身も中国語で交流がほぼできない状況で、上海で会社を作りました。その意味では、一般的な日本人とは違う種類の人種なのかもしれません。しかし、それは考え方ひとつで誰にでもできることだと私は思います。

独立する人の多くは、組織にいる間に予行演習を繰り返しています。私自身もそうでした。周囲が協力的でなくても、上司が賛同しなくても自分の身を削りやる価値があるならば、周囲へ迷惑をかけない範囲でやってみるのです。給与をいただきながら演習できるわけです。こんなありがたい話はありません。その経験が自信になり、海外でチャレンジしたり、起業したりするときの心の支えになっているのです。

もちろんチャレンジする上ではリスクを伴います。しかしリスク以上の勘違い、いや情熱も人生では必要なのではないでしょうか。

私は何か新しいことをするときには、リスクと可能性を天秤にかけてみます。可能性には現実味が今なくてもポジティブに将来を見込むようにしています。それで可能性が勝るのであれば、とりあえずやってみる。一番大切にすることは直感です。周囲の人に相談してみてください。90%の割合でマイナスの意見が出てくることと思います。それは、日本人の9割ほどの人は、そのような生き方をしてきていないので、そちらの世界が想像できないからです。

しかし、これが中国や東南アジアの人になると、なぜもっと早くやらないんだと逆に説教されるほどなのです。

-スケールの大きな話は鵜呑みにしない

アジアで一旗あげてやろうと目指す日本人も確実に増えています。大学ではグローバル系の学部が新設され、アジアビジネスを学ぶコースも増えています。最近では、英語であらゆる学問内容を横断的に学ぶグローカルなコースが流行りのようです。教育業界だけでなく産業界でも日本人の中からグローバル人材を育成しようという動きが活発化しているようです。大手の企業では独自に人材育成事業が盛んに行われています。

あえて新人を厳しい場へ追い込むことで、成長を期待しているのがNECだ。NECは新入社員のうち5~10%を選抜し、海外拠点へ送り込んでいる。GTIと呼ぶもので、NECが新人向けに用意する教育研修制度の一つ。半年間の国内研修を経て、海外で1~2年間働く。原則的に、上司となるのは外国人で、英語やフランス語など現地の言葉で仕事に取り組まなければならない。

引用:日経ビジネス 記者の目 「新人は海外で育てよ」

しかし、真のグローバル人材とはどういう人達なのでしょうか。

私はいつも疑問を持ちます。日本の大学はあたかも優等生的な海外駐在員を育成しようとしているのではないかと思うのです。語学力が高いだとか、統計が読み取れるだとか、海外情勢に精通しているだとか。このような能力は確かにあったに越したことはないのですが、厳しいアジアでのビジネス環境はもっともっと泥臭い世界なのです。有名商社の元社員の方や外資系投資会社に在籍されている方のスケールの大きな話は、私たちを奮い立たせてくれます。しかし、そのバックボーンを手に入れることができない人は、どのようにすればその領域に到達できるのでしょうか。その話を鵜呑みにして海外に飛び出したところで、次のステージへのステップアップは見えてきません。

ではなぜ、このような事態になっているのでしょうか。

それには、二つの要因があると私は感じています。一つ目はアジアが激変しているのが「今」だからです。実際に現場でゼロからビジネスを組み立て成功した人は今も現場で奮闘しているはずです。中国が急激な成長を遂げたのもここ15年の出来事です。そして外国人がアウェイの地で成功を収めるのは容易なことではありません。そんな中である程度バッボーンのある方が、企業の名前で成功を収めたというケースはよく目にします。大手企業ほど組織体で動きますので、それを個人の手柄的に扱うのはどうかと私は思うのです。

二つ目は講演会や大学の教壇に呼ばれる人の多くが、バックボーンがある人だからです。有名企業の肩書きがあれば主催側も箔がつきますよね。特に日本人が知る会社名であれば海外での業績はどうあれ聴く人からすると安心するのです。そのバックボーンを目指す人、またはそのような組織に属する人であれば大変役にたつお話だろうと思います。ただそれは少数派であり、多くの人からすればそのバックボーンがない状態で、いかに勝負していくのかがポイントになるのです。これから海外で起業しようとされる方には、少し間が抜けた内容になってしまうのではないかと思います。

例えば、講演会や著書で「現地法人の人事制度を見直し離職率を大幅にダウンさせた。その結果売り上げは前年比で2倍になった」

というお話を聞いてもこれから海外で起業しようとする、または既に展開している中小企業や個人の方には、ピンとこないはずです。人事制度を見直すにあたり生じた反発や弊害についてどのように解決したかは、その組織の規模や資金力で様々だと思います。そんなことより離職率の高いアジアでは、如何にコストを抑えながら一日でも長く勤めてくれる真面目な人材を、どのように確保するかという切実な「現場のお話」の方が重要な気がします。

この場合、私であればこのような方法をご紹介します。

これは各国でも事情が異なりますが、ことに中国では大学の最終学年はインターンシップに時間を費やします。企業によっては無給で、有給の場合でも初任給の半額ほどで雇用できます。大学へ出向き掲示板などで掲載すると電話で応募がどんどん入ります。もちろん無料です。まずはインターンで雇用し優秀であれば正社員とする。最初は1円でもコストを抑えたいものです。海外では経験者も良いのですが、新卒者の方が会社に従順に動いてくれるというメリットもあります。いきなり人材会社に頼る前にもいろいろな方法があるものです。

また、ある程度ゆとりのある企業の海外法人ですと顧問弁護士が付いていたり、コンサルティング会社が入っていたり、財務のポジションに見聞き役のおばさんを置いたりします。このおばさんが社内のお母さん的役割で若いスタッフを見張ってくれるのです。ある程度の人事トラブルはこの陣営で抑えられます。ところが余裕のない小さな会社では、代表者がすべて矢面に立たなければなりません。この時点で、対応の仕方も全く異なってくるのです。

 

-メディアもコンサルタントも現金なひとたち

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私の知り合いのベンチャーキャピタルの社員がこんなことを言っていました。

「メディアで騒がれたときには既に時遅し」。

例えば、ベトナムで日本のうどんが大人気というニュースを見て、ホーチミンでうどん屋さんを始めようとしても既に遅いということです。もちろん市場はありますのでチャンスがないわけではないのですが、もろもろの準備を経て1年後に開店した頃には、ベトナムのうどんブームは次のステージに入っているということです。既に中国や韓国企業が見よう見まねで日本のうどん店を経営し、競合店ひしめく中での価格競争に陥っているかもしれません。

ベンチャーキャピタルとは、高い成長性が見込まれる未上場企業に投資することで、上場時に利益を得ます。従い彼らは、メディアに報道されたときには既にチャンスは過ぎ去ったと見ているのです。最前線でお仕事されている人たちからすれば、「とっくに知ってたよ」という情報ばかりなのです。

メディアと同様にコンサルタントも同じことが言えるかと思います。もちろん、親身になって指導していただけるコンサルタントもおられます。しかし、人は何かにすがりたいものです。流行に乗ってコンサルタントすることで人は右へ左へと流されてしまいます。例えば、わずか5、6年前まで中国へ進出しよう!と勧めていたメディアやコンサルタントが、今では掌を返したかのように撤退のススメで煽りをかけてきています。

あらゆる情報やお話に耳を傾けることも大切だと思います。しかしそれはあくまでも情報にすぎず、リテラシーを持って接して欲しいのです。ご自身の将来の指針はまずは、ご自分自身を知ることから始めるべきではないかと思います。

自分がどういう性格でどういう人間なのか。どんな生き方をしてきたのか。学生時代にはどんなことに熱中して頑張ってきたのか。そして何が得意なのか。得意なことなんて何もないと思われる方は、小学校や中学校の頃の通知表やアルバム、作品などを開いてみてください。写真や書き込みを見ると意外な発見があるかもしれません。先生や友人に褒められた、あるいは感謝された小さな出来事などが思い出されると思います。一つでもあるはずです。そのあなたの長所が今後のお仕事でも必ず生きてくると思います。

そして海外に出ると、これまでの枠にとらわれない新しいお仕事に出会えるかもしれません。

 



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