実はあまり人気がない日本への留学

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-「出稼ぎ留学生」と「国費留学生」ばかり増やしてどうする!?

日本政府は2008年に留学生30万人計画を発表した。これは2020年までに、当時の14万人から30万人に留学生を増やそうという計画だった。下記グラフを見ると、一見留学生数は順調に伸びているようにも見える。しかし実態は、本来の目論見とは全く異なる。

資料:日本学生支援機構

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下記は、日本国内の日本語学校における4月生の推移。2009年度申請者数は2万人を超え順調な伸びを見せるかと思われたが、翌2010年からは減少へ転じる。2011年の東北地方の震災ならびに放射能汚染による風評被害は2013年度生まで影響を与え、特に中韓台からの申請者は2009年度比で3分の一にまで減少した。それに引き換え、ベトナム、ネパールからの申請者は、過去6年で急激に増加しており、2015年4月生ではこの2カ国が全体申請者数の40%以上にまで達している。特にベトナムからの申請者が初めて中国を抜いて国別ではトップとなった。

日本語学校申請者数(各年4月生)

資料:日本語教育振興協会

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ベトナム、ネパールからの留学生の多くが「出稼ぎ留学生」と言われている。これまでは研修生として日本へ出稼ぎに来ていた若者の層が留学という名目で日本へやってきている。午前は日本語学校で学んで、午後から深夜まではアルバイトに勤しむ。

わずか数年前までは、漢字圏と言われる国や地域(中国、韓国、台湾、香港)からの留学生が全体の80%以上を占めると言われた日本の教育現場において、現在の日本語学校ではその比率は30%前後に過ぎず、今後もこれら漢字圏からの大幅な申請者数の増加は期待できそうにない。日本として本来欲しい留学生層、つまり富裕層かつ優秀な学生はアメリカ、イギリスなど欧米に流れている。下記はアメリカに留学中(2013)の学生数。日本の4倍前後。

資料:IIE(米国国際教育研究所)

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日本の大学が受け入れているベトナム、ネパールを除く東南アジアからの留学生の約15〜20%が国費留学生とされている。国費留学生は大学の授業料のほぼ全額が支給され毎月10数万円の生活費が支給される。一方では中国、韓国、台湾からの留学生の99%は私費で日本へ来ており、日本の大学からすれば良いお客様なはずが、近年の各国間の関係などもありこれら国々の若者からは見放されつつある。日本はもはや安売りをして東南アジアから学生を集めなければ来てくれない。一方アメリカやイギリスは、日本よりもはるかに高い学費でも留学生には魅力的なのだ。そして日本政府はさらにアフリカにまで地域を広げ、国費留学生を増やそうとしている。

 

-日本語学習はせいぜい趣味程度。

国際交流基金の統計では、日本語学習者数は韓国、台湾を除けば軒並み増加傾向となっている。しかし中国に関しては、現場で見ている私からすると下記統計は疑わしい数字であり、2010年以降、実際には日本語学習者は減少している。上海の大学は日本語専科の定員数を削減し閉鎖に追い込まれた中国国内の日本語学校も少なくない。日本語能力試験の受験者数でもそれは明らかで、2009年の中国受験者数は327,255に対して2012年には215,287人まで減少した(参考:http://www.jlpt.jp/index.html)。今後は日本企業の中国離れなども懸念される。現地日本語学校関係者によると、初級クラスや短期コースは人気だが、留学や就職といった志向をもった学生はさほど増加しないのではないかとの見方が強い。

資料:国際交流基金

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一方では、インドネシア、オーストラリア、米国、タイなどは日本語学習者が確実に増加している。しかしこちらも留学にはあまり結びついていない。学習者の多くが趣味程度の初級クラス学習者であり、現地で教える日本語教師のレベルが上がらないことも要因にあげられている。人材不足から、インドネシアやベトナムでは、日本での研修生を経て大学などで日本語を教えるケースも見られる。国際交流基金では、日本人の日本語教師を東南アジア諸国へ派遣する「日本語パートナーズ」(http://jfac.jp/partner/index/)を実施している。

留学生があらゆる国から訪れることで、日本語教育の教授方法や生活習慣、信仰宗教への配慮など新たな問題に直面している。

タイやインドネシアなどでは、国をあげて英語教育に力を入れている傾向もあり、英語プログラムで現地募集を行っている日本の大学は出願者を増やしている。現地の留学担当者にヒアリングすると、これら国々の若者にとっては、日本語学習期間を経て日本の大学へ進学するよりは効率的で将来性も見込めるということで英語プログラムでの日本留学は人気があるそうだ。また、英語で学べるコースでは大学が独自で奨学金を用意している場合も多く、そのことも要因の一つと考えられる。

観光ビザ緩和に伴う訪日観光客は、急激に増加しており2014年は1300万人を突破、2015年はさらに増加が見込まれる。タイやマレーシア、中国の現地留学関係者によると、この流れは留学にも少しずつ好影響を与えており、日本から帰国した後に自分の子供を日本へ留学させたいという相談もあるという。訪日観光客に対して日本の学校をアピールできるような機会をつくり、留学へ引き込む方策も今後は求められる。

 



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